公害弁連第36回総会議案書
2007.3.21  東京
【2】 各地裁判のたたかいの報告(道路建設差止)
〔3〕広島から・高架道路延伸・道路公害差止・騒音鑑定の早期実施を
弁護士  足立修一

1  広島市内を通過する国道2号線の現状
 現状で,広島市内の国道2号線は,24時間交通量でみると約7万台から8万台で,大型車の混入率も約17%あります。この結果,騒音被害では,1997年に,当時既に高架道路ができ2階建てになっている道路部分の沿道で,昼間85デシベルという全国で最高の値を記録したこともあります。また,大気汚染についても,沿道の自排局の測定結果で,二酸化窒素,SPMなども環境基準を超えている水準にあります。ただ,広島の道路公害については,もともと,公害健康被害補償法の公害病指定地域でなかったことから,国道2号線沿道の居住者で,肺繊維症,肺気腫,咽頭炎,喉頭炎,気管支喘息などに罹患していても,いわゆる公害病としては認定されていません。
2  公害差止訴訟を提訴してから
 2002年8月,広島地方裁判所に対し,広島市内の中心部を貫く国道2号線の沿道100メートル内に居住・通勤する原告151名が,国と広島市を被告として,高架道路建設差止・道路公害の差止(供用制限)・生活妨害・健康被害に対する損害賠償(総額約3億3000万円)を求めて提訴し,訴訟を継続してきています。
 これまで口頭弁論で,原告側は,差止請求の適法性,大気汚染,騒音・振動問題,交通政策論などの総論の主張立証を継続してきています。これまで,口頭弁論期日において,原告に意見陳述をしてもらい,沿道住民が日々さらされている健康被害,騒音被害の実情,日常生活への妨害などの被害について訴えてきています。
 今年度は,騒音被害の総論立証を主として行い,住民が主体となって,沿道での騒音測定を行ってきました。その結果,国道43号線最高裁判決で騒音被害の違法性を認めた基準を上回る数値が日常的に記録されています。現在は,沿道での騒音鑑定の実施とその費用負担をどうするかを巡り攻防が続いています。
3  国道2号線の高架道路延伸工事の現状と展望
 2003年10月,広島市内中心部への国道2号線西広島バイパスの高架道路延伸計画は,残念ながら,第1期工事(西区庚午から同区観音本町まで・2.1キロ)が完成し,供用されています。しかし,他方で,第2期工事(中区舟入中町から同区平野町まで・2.3キロ)部分については,2002年11月,広島市が地元の意見調整が必要ということを指摘し,第2期工事の着工を見送り,現状でもその状態が続いています。広島市は,沿道住民が本件訴訟を提起していることや広島市の財政難の状況が深刻であることを受け,2007年度まで第2期工事部分の着工を凍結している状況にあります。ただ,2007年4月に行われる市長選挙の争点になれば,その結果によって今後の着工については予断を許さない状況があります。
4  今後の裁判の展開について
 広島で提訴した公害差止裁判では,高架道路の延伸を阻止することのみならず,現状における道路公害による被害(騒音・振動・大気汚染)を問題として,総体としての公害の防止及び被害に対する損害賠償を求めており,現在ある道路公害による被害の実態について,今後は騒音鑑定の実施などを通じて,沿道住民の全てが被っている生活妨害の被害や健康被害の実情などの道路公害を裁判所に認めさせるかということに努力したいと考えています。
 今後とも,皆さまのご支援,ご注目をお願いしたいと思います。