公害弁連第36回総会議案書
2007.3.21  東京
【2】 各地裁判のたたかいの報告(廃棄物問題)
九州廃棄物問題研究会1年の歩み
弁護士  高橋謙一

1  九州廃棄物問題研究会とは,九州各地の廃棄物処理施設と,住民・市民の側に立って戦う団体である。現在主として,(1)新設最終処分場阻止,(2)一般廃棄物処理施設設置・操業阻止,(3)既設産業廃棄物埋立場是正,の三つを柱として活動している。
 そういう中,昨年はある意味で節目となる年であった。
2  まず,(1)に関して,2月に,管理型産業廃棄物処分場差止認容判決が出た(鹿児島地裁平成12年(ワ)第615号等)。この判決はわずか9ヵ月後の高裁判決でも維持され,業者は上告を断念,計画の撤回を表明した。これをもって九州においては,新設の産業廃棄物処分場闘争が一段落したと言える。今後は,市町村設置の一般廃棄物処分場を阻止できるかどうかが課題となる。
3  その一般廃棄物の焼却施設については,残念ながら私たちは一つも設置・操業を阻止できなかった。原因はいくつかあるが,最大の理由は,私たちと住民の戦いにプレッシャーを受けた操業者や焼却施設メーカーが,必死の操業を行い,私たちが懸念した環境悪化を生じさせなかったためである。
 私たちはこれを,「運動の成果」と評価した上で,単純に設置・操業差止を求めるのではなくて,操業者にプレッシャーをかけ続けて現在の環境を維持させる適正な操業をさせる戦いへと転換した。その結果,裁判自体の目的は達したとして,一つの裁判で和解が成立し,他の裁判もそれに続こうとしている。それは決して反対運動の終末ではなく,運動の発展の過程における,反対運動の一手段であった裁判の位置づけの確認として捉えられている。今後は本当に住民・市民が主体となって,良好な環境保持の戦いが続けられる。
4  現在の最大の問題は,(3)の既存産業廃棄物処分場是正である。仮処分などを使って操業を差止させた施設も,そのままでは有害物を垂れ流し続ける。従って,操業停止では足りず,危険物の全面撤去(私どもは全て危険物だと思っているので結局は埋立物全部)が不可欠である。これはなかなか困難な闘いであるが,現在福岡県旧筑穂町(合併後の飯塚市)の産業廃棄物処分場に対する撤去の義務付け訴訟で,突破口が開ける可能性がある。
5  いずれにしても,私たちは現在,廃棄物処理施設との戦いは,新しい局面を迎えていると考えている。ここ数年内に,特に産業廃棄物埋立場の問題は大きく動くのではなかろうか。いや,大きく動かすような運動をしたいし,しなければならない,というべきであろう。皆さんのご協力を期待する。