公害弁連第36回総会議案書
2007.3.21  東京
【2】 各地裁判のたたかいの報告(大気汚染)
〔4〕 名古屋南部あおぞら裁判・道路連絡会の報告
弁護士 松本篤周

1  はじめに
 2000年11月27日の勝利判決をふまえて,01年8月,89年3月の提訴以来12年ぶりに国と企業との間で全面解決和解が成立し,早くも判決から6年,和解から5年あまりが経過しました。和解を契機として設置された道路沿道環境改善に関する連絡会(略称連絡会)の取り組みの到達点について,とくに国土交通省との交渉に絞って報告します。23号の交通量を減らして,道路からの大気汚染物質を減らして,大気汚染をなくすことが課題です。そのための車線削減であり,交通量調査であり,大気汚染の測定です。これがどうなってきたか,という観点から報告します。
2  名古屋南部道路環境連絡会
(1)  これまでの取り組み
 第1回 02年5月17日(金)に名古屋港ポートビルにおいて弁護団,専門家,患者会役員のほか原告ら約60名の参加の下に開催されて以降,毎年1回開催され,2006年6月28日で第5回が行われました。その間に毎年3回ないし4回の準備会が開催されてきました。
(2)  原告側の要求
 和解条項の実現が大前提ですが,これに加えて,和解から2年後である03年12月に下記の申し入れをしました。
「@ 大型車の交通量削減のための総合的な調査の実施
 国土交通省は,名古屋南部地域(以下本件地域という)における交通負荷の軽減・大型車の交通量低減のための施策を総合的かつ効果的に進めるために,事業主団体等の協力を得て,大型車の運行経路,運行経路選択要因等に加え,大型車の運行実態(頻度,時間帯等),車両の年式,ディーゼル微粒子除去装置装着の有無,交通規制や本格的な環境ロードプライシングが実施された場合の運行経路選択に係る意向等に関する別紙調査を実施すること。
A 環境ロードプライシングの試行
 国土交通省は,前記@の調査結果を分析評価するとともに,新たな取り組みについて交通量や環境への効果・影響を調査検証する社会実験の活用などにより主体的に検討を行い,本件地域における大型車交通量を削減する観点から,本格的な環境ロードプライシングを検討,試行すること(但し,伊勢湾岸道路周辺の環境を悪化させない対策をとること)」
(3)  和解合意に基づく交通量調査の問題点と今後の課題
@  交通量調査の状況(湾岸開通により23号の 交通量も増加傾向)
 和解後毎年7月に交通量調査が行われています。2006年の交通量調査の結果(本年7月実施,10/11発表)によると,またまた,23号の交通量が増加しました。結局のところ,23号の総交通量の絶対量は,調査が開始された5年前のH13に比べて約6000台の増加となってしまっています。つまり,伊勢湾岸道路開通が全体として交通量増大の呼び水となり,名古屋南部全体の交通量が増加する(約19万台で,平成13年から49000台増加)中で,23号全体の交通量が増加してしまっているのです。ただ,少なくとも2断面及び3断面の交通量は4年前と比べて,約4000台の減少しており,今後湾岸の料金減額による誘導と23号の車線削減を組み合わせれば,通過交通の減少は展望があると思われます。
A  伊勢湾岸道路利用促進社会実験
16年11月から17年1月末まで伊勢湾岸の飛島・東海IC間での往復割引及び定期券割引方式による23号からの社会実験が行われました。結果としては,湾岸道路の一日あたりの大型車交通量が4400台から4900台へ約500台増加しましたが,微々たる影響にすぎず23号の交通量に与える影響は不明でした。そもそも何故この限られたインター間にしたか,全線開通したのに,名古屋南ICから四日市JCまで全線の割引社会実験をしていないことが問題です。
(4)  最近の状況
 最近になって,中部整備局も車線削減と抜本的な通過交通量削減のためのロードプライシングの実施が緊急課題であるとの認識を持ちつつあるようです。
 現在,上記の課題を達成させるための,本格的社会調査を実行する方向で協議を続けており,具体的には今年の秋には,尼崎の「大型車の交通量低減に関するアンケート調査」に匹敵する調査を行う予定で,現在具体的なアンケート項目の詰めの協議を行っています。来年の今頃には,調査の概要について報告できるのではないかと思います。そしてアンケート結果を踏まえ,23号の車線削減及びロードプライシングによる湾岸線への交通量の誘導を組み合わせた政策を早急に具体化させ,抜本的な交通負荷の軽減と大気環境の改善を実現すべく頑張りたいと考えています。