公害弁連第36回総会議案書
2007.3.21  東京
【6】 公害関係資料
【諫早湾関係】

−声明−

諫早湾干拓農地リース問題に関する住民訴訟の提起について

2006年8月23日
原告団 弁護団

 本日,長崎県民76名が原告となり,長崎地方裁判所に対し,国営諫早湾干拓事業によって造成される干拓農地を財団法人長崎県農業振興公社が一括配分を受け,これを農業者にリースすることができるようにするための長崎県の公金支出に対し,その差し止め及び返還を求める住民訴訟を提起した。

 去る6月5日,原告らは長崎県監査委員に対し同趣旨の住民監査請求を行っていた。ところが,8月1日に送られてきた監査結果は,多くの論点について判断を回避し,かろうじて判断を示している部分も県当局の主張を鵜呑みにするだけで,踏み込んだ検討を全くしていないという極めてずさんなものであった。今回の提訴は,こうした経緯のもとに,地方自治法第242条の2に基づきなされたものである。

 もともと着工前から農地造成,防災のいずれの事業目的も合理性がないとして批判を浴びていた諫早湾干拓事業は,着工後,まず諫早湾内の漁業に壊滅的な打撃を与え,潮受堤防閉めきり後は有明海全域に漁業被害を拡大させ,いまや有害無益な公共事業の典型として批判を浴びている。今回の干拓農地リース問題は,この事業による新たな被害を長崎県民に負わせようとするものである。

 本件の本質は,事業完成が間近に迫り,造成した干拓農地での営農が日程にのぼるなかで,いよいよ農地造成の事業目的に合理性・必要性がなかったことが明らかになり,そのつじつま合わせをしなければならなくなったことにある。そのツケは,本件事業の地元である長崎県による公金支出という形で,長崎県民に負わされようとしている。

 わたしたちは,こうした公金支出によるつじつま合わせが違法であり,しかも目先の一時的な矛盾の回避にしかすぎず,干拓農地における営農の矛盾を回避するために,長崎県はさらなる違法な公金支出を余儀なくされることを,本訴訟を通じて徹底的に明らかにしたいと考えている。

 財政難にあえぐ長崎県政のなかで,ただでさえ長崎県民は暮らしや福祉を圧迫されている。有害無益な干拓事業のつじつま合わせのための際限のない違法な公金支出は,長崎県民の未来を閉ざす深刻な生活被害をもたらさざるを得ない。

 長崎県民は決してそれを看過しないであろう。