公害弁連第37回総会議案書
2008.3.23  諫早
【1】 基調報告
第2  公害裁判の前進と課題
4  廃棄物問題のたたかいの前進と課題
(1)  リサイクル制度の改正・見直し
 07(平成19)年12月、残飯や売れ残り弁当など食品廃棄物について減量、再資源化を強化する改正食品リサイクル法が施行された。新たに設定されたリサイクル削減率は、一律だった削減率を業種・業態別に規制する方法に改め、食品メーカー85%、食品卸売業70%、食品小売業45%、外食産業40%と定めた。しかし、05年度の達成率は、食品小売業31%、外食産業21%に止まっているため規制のハードルが高く、小売、外食業者からは、「各店舗ごとに調理しており、生ゴミの集約が難しい」「大量に出る食べ残しから細かく分別するのは現場の負担になる」という声も上がっている。削減率の達成は、分別や回収に要するコストをどこまで低減できるかが鍵である。
 経済産業・環境両省は、リサイクル料引き下げを内容とする家電リサイクル法改正案を08(平成20)年の通常国会に提出する方針を固めた。同法は、01(平成13)年から施行され、家電4品目(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン)のリサイクルを義務づけ、消費者が、廃家電を小売業者に引き渡す際、リサイクル費用及び運搬費用を支払う制度となっている。リサイクル料金は、テレビ2,700円、冷蔵庫4,600円、洗濯機2,400円、エアコン3,000円となっていたが、07(平成19)年にエアコン料金が500円引き下げられたのを除き、法施行から変わっていなかった。そのため、リサイクル料金の負担を敬遠した消費者が家電4品目を不法投棄する事例が跡を絶たなかった。引き下げ幅や実施時期については、両省とメーカーとで詰めが行われている。
 また、環境省は、家電リサイクル法に基づき政令でメーカーに義務付けているリサイクル(再商品化)率について、最近の実績値をもとに引き上げる方向で検討に入った。引き上げを対象となる品目の06(平成18)年度のリサイクル率は、洗濯機79%(政令50%)、冷蔵庫71%(政令50%)、エアコン86%(政令60%)であり、実績値を目安に引き上げ幅を決定する予定である。ただ、専門家の中から、リサイクル率の向上に伴い二酸化炭素の排出量が増加すれば、環境への負荷を高めることになるという指摘もなされており、曲折も予想される。
 回収済廃ペットボトルのリサイクル制度が危機に直面している。原油価格の高騰や中国などの需要増加に伴い相場価格が急騰しているため、財政難の地方自治体が、直接輸出業者に廃ペットボトルを売却するようになり、国から指定を受けて廃ペットボトルのリサイクルに取り組む指定法人に廃ペットボトルが流通しなくなっている。PETボトルリサイクル推進協議会によれば、07(平成19)年度の落札価格は1キロ当たり38.9円に達し、前年度の倍の価格水準になった。これは、国内向け回収量25万6,000トンに対して、輸出量が22万5,000トンに登っているためで、今後も廃ペットボトル価格が高水準で推移する見通しであり、この状態が続けば廃ペットボトルのリサイクル制度そのものが成り立たなくなる可能性が指摘されている。
 リサイクル制度の危機は古紙にも及んでいる。木材チップや燃料の高騰に加え、中国を中心とする輸出の急増が古紙価格を押し上げている。価格上昇に伴いリサイクル率も向上し、06(平成18)年の回収率は72.4%に達した。その反面、上質の古紙価格が01(平成13)年の1トンあたり7?8円から、07(平成19)年には16?18円にまで上昇し、再生紙メーカーを直撃している。再生紙に関しては、製紙業界が配合率を偽った問題が明るみに出たばかりであり、古紙リサイクル制度の基盤の弱さが指摘されている。

(2)  フェロシルト不法投棄問題とリサイクル製品認定制度
 石原産業(大阪市)が、岐阜、愛知、三重、京都の4府県で土壌埋め戻し材フェロシルトを不法投棄した問題では、廃棄物処理法違反(不法投棄)に問われた同社元副工場長らに対して実刑判決が下された。しかし、その後愛知県瀬戸市でも不法投棄されたことが判明したため、同県は、元副工場長らを廃棄物処理法違反で告発するとともに、石原産業に対して同法に基づく撤去命令を出す方向で検討を進めている。
 フェロシルト問題は、全国で進められてきたリサイクル製品認定制度にも影を落としている。同制度は、府県が、建設廃材などの産業廃棄物のリサイクルを促進させる目的で導入したものである。三重県は、石原産業のフェロシルトをリサイクル製品として認定していたため、認定制度に対する不信感が一気に高まった。現在17府県が認定制度を導入しているが、全国的に統一された安全・認定基準作りが課題となっている。

(3)  各地のたたかいの成果と課題
 07(平成19)年8月、千葉県旭市(旧海山町)の産業廃棄物最終処分場について、千葉地裁は、事業主の経営基盤に関する県の調査が不十分であり、財政面から処分場の適正管理は困難で、有害物質が周辺住民に重大な危害を及ぼす恐れがあるとして、設置許可を取り消す判決を下した。千葉県が、判決を不服として控訴したため東京高裁で審理が続いている。
 岐阜県御嵩町の産業廃棄物最終処分場問題で、07(平成19)年12月、岐阜県、御嵩町及び寿和工業の3者は、住民投票の結果を尊重して計画地には処分場を設置しないことで合意した。その結果、計画が発表されて以来16年が経過して同問題は解決したが、元町長襲撃事件の真相は未だに解明されていない。
 栃木県大田原市の一般廃棄物焼却施設をめぐる問題で、同市が、ゴミ搬入を阻止した反対住民に対して損害賠償を求めた裁判で、宇都宮地裁は、反対住民の搬入阻止には違法性がないとして請求を棄却するとともに、同市の広報紙により反対住民の名誉が傷付けられたとして反訴提起した反対住民の請求を認め、同市に賠償金の支払いと謝罪広告の掲載を命じた。
 福島県南相馬市の産業廃棄物焼却施設をめぐる問題で、建設予定地の借地権を解除した反対住民に対して、福島地裁相馬支部は、工事が中断したことにより損害が生じたとして反対住民に損害賠償を命じた。
 廃棄物最終処分場及び焼却施設については、計画や建設数が減少したことに伴い、反対運動や訴訟の数も減少している。
 しかし、埋立容量が少なくなりつつあることを背景として、大型の最終処分場の建設計画が立てられており、新たな処分場計画の差止めを実現するために、安全性を確保を第一とした新たなたたかいを構築する必要がある。
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