公害弁連第37回総会議案書
2008.3.23  諫早
【6】 公害関係資料
〔諫早湾関係〕
−漁民抗議声明−

諫干完工式典に当たり、有明海漁民の怒りの抗議声明

2007年11月20日
有明海4県漁民有志

 諫早湾が潮受け堤防で締め切られて10年、有明海異変と漁業被害の原因を諫早干拓事業と認めず工事の強行を重ねてきた農水省と長崎県は、本日「国営諫早湾土地改良事業完工式典」を実施し、祝杯をあげるという。われわれ4県漁民有志は、漁業被害で生活が破壊された漁民や自殺に追い込まれた20名を超える漁民やその家族に代わって、漁民を見殺しにしようとしている農水省と長崎県に腹煮えたぎる思いで、怒りの抗議をする。
 農水省は自ら作り、当時の農水大臣がノリ第3者委員会の提言を守ると約束した「中長期開門調査」を実施することを拒否し、有明海異変の改善対策は諫干抜きの覆砂事業や海底耕運事業など対症療法を続けてきた。締め切られた潮受け堤防による潮流の鈍化と調整池からの汚濁水の流出により、赤潮の多発と貧酸素を作り出し、有明海の海底はヘドロ化が進み、正常な生物が住めない「死の海」になろうとしている。
 今年8月下旬からの潮受け堤防外でのアサリとカキの斃死は近傍の漁民に大打撃を与えた。島原半島沖から熊本にかけて魚介類が極端に減り、漁船漁業と採貝業者は生活できない事態に追い込まれている。これらは明らかに調整池からの汚濁水の排水である可能性が強い。ところが農水省は諫干が原因であるとの因果関係が明らかにされていないとして、漁業被害の補償も拒否している。
 ノリは養殖であるため、ノリ漁民の必死な人為的努力でなんとか取れるように頑張っているが、品質の落ちた海苔を大量にとり何とかしのいでいる。労働作業も強化され、経費も上がり、生活苦は強まっている。ノリ漁民は減りつづけ、いつ大凶作が起こるかと心配しながら続けているのが現状である。このような有明海漁民の苦しみの上にたって完成した諫干の完工式を祝う農水省と推進派の行動に、4県漁連が不参加を表明したのは当然である。
 造成した農地はリース方式にし、50件程度の農業者が入るという。長崎県はそのために35億円の税金を投入する。一部の農業者だけを優遇し、一般の農業者と差別し、とりわけ有明海の漁民は見殺しにする農水省と推進派長崎県を絶対許すことは出来ない。調整池と干拓地での農業を続ける限り、有明海異変は一層深刻になり、有明海から近いうち漁民がいなくなる可能性が強い。
 有明海漁民にとって「有明海再生」は、待ったなしの緊急課題であり、そのためには排水門の開門以外改善の方法はない。農業と水産業に責任を持つ農水省が諫早干拓地農業だけしか考えない本日の完工式に怒りの抗議をするとともに、有明海再生のため緊急に開門することを強く要求する。
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