公害弁連第37回総会議案書
2008.3.23  諫早
【2】 各地裁判のたたかいの報告(産業廃棄物問題)
九州廃棄物問題研究会1年の歩み
弁護士 高橋謙一

1  九州廃棄物問題研究会とは、九州各地の廃棄物処理施設と、住民・市民の側に立って戦う団体である。現在主として、①新設産業廃棄物最終処分場阻止、②一般廃棄物処理施設設置・操業阻止、③既設産業廃棄物最終処分場是正、の三つを柱として活動している。

2  まず、①に関しては、ほぼ終焉に向かっていたが、2007年10月に山口県美祢市の安定型産業廃棄物処分場差止仮処分が新たに提訴されている。この事件の結論がまもなく出るはずであるが、それによって産業廃棄物に関する問題が終焉に向かうのか、新たなる戦いが始まるのかが、決まる。

3  ②については、設置・操業の差止に成功した例は残念ながら昨年もなかった。
 しかし、反対運動による操業者に圧力をかけ、私たちが指摘する環境悪化が生じないように必死の操業を行わせたことは成果である。
 私たちはこれを、「運動の成果」と評価した上で、単純に設置・操業差止を求めるのではなくて、操業者にプレッシャーをかけ続けて現在の環境を維持させる適正な操業をさせる戦いへと転換した。その結果、裁判自体の目的は達したとして、次々と和解が成立しつつある。もちろん「和解」は決して反対運動の終末ではなく、運動の発展の過程における「区切り」でしかない。現在は住民・市民が主体となって、良好な環境保持の戦いを続けている。

4  昨年の最大の問題は、やはり③の既存産業廃棄物処分場是正である。仮処分などを使って操業を差止させた施設も、そのままでは有害物を垂れ流し続ける。従って、操業停止では足りず、危険物の全面撤去(私どもは全て危険物だと思っているので結局は埋立物全部)が不可欠である。これはなかなか困難な闘いであるが、まもなく福岡県旧筑穂町(合併後の飯塚市)の産業廃棄物処分場に対する撤去の義務付け訴訟の判決が下される。それによって突破口が開ける可能性がある。

5  いずれにしても、私たちは現在、廃棄物処理施設との戦いは、新しい局面を迎えていると考えている。ここ数年内に、特に産業廃棄物埋立場の問題は大きく動くのではなかろうか。いや、大きく動かすような運動をしたいし、しなければならない、というべきであろう。皆さんのご協力を期待する。
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