公害弁連第37回総会議案書
2008.3.23  諫早
【3】 特別報告
みずしま財団 報告
みずしま財団
研究員 白神加奈子

1  はじめに
 2006年度は、倉敷公害訴訟和解10周年という節目を迎え、また水島地域の現状と課題を明らかにした「水島地域の再生のために −現状と課題−」の作成、またそれに基づく「みずしま財団中長期計画」を作成した年でした。そして2007年度は、その中長期計画施行の1年目であり、財団設立9年目の年となりました。設立1年目は、10日ほどだったため実質は丸8年が経とうという時期ではありますが、10年目を見据えみずしま財団の基盤整備に取り組む年でもありました。
 ここでは、来年度10年目を迎えるにあたり、今年度の活動を振り返るとともに、今後の展望について考えてみます。

2  みずしま財団の事業
 みずしま財団の事業は、環境再生・まちづくりにとりくむ上で、大きく4つの柱があり、1つめの柱には2つのテーマが含まれます。

■地域再生
┣ □地域の研究機関としての役割
┗ □人と人、組織と組織をつなぐ役割
■公害経験の継承と被害者支援
■公害・環境学習
■情報収集・発信

 また、これら事業とは別に2007年度は組織基盤整備事業もおこなっています。まず2007年度の各事業についてふれ、その後、組織基盤整備について詳しく述べたいと思います。
(1)  地域再生
 地域再生には、「地域の研究機関としての役割」と「人と人、組織と組織をつなぐ役割」の2つが含まれます。「地域の研究機関としての役割」には「水島のまちづくり」や「公害・地球環境」「高梁川流域と瀬戸内海の環境再生」「コンビナート研究」といった研究テーマが含まれており、2007年度は、水島の中心部をながれる八間川について、歴史や現状を調べ直し、地域住民の方々に広く伝える展示会の開催などをおこないました。また、瀬戸内海ではみずしま財団が最も早くから研究をおこなってきた、海底ゴミについても引き続き取り組んでおり、行政等へ対策にむけた働きかけを行っています。
 また、「人と人、組織と組織をつなぐ役割」には、「まちづくりをめざす協働の推進」「市民参加パートナー育成」といったテーマが含まれており、現在、倉敷市が水島地域で実施を検討している「まちづくり交付金事業」に関連して、市民と行政をつなぐ場「まちづくり懇談会」の開催等を行っています。

(2)  公害経験の継承と被害者支援
 「資料保存・活用」と「公害患者のQOL・ADLの維持向上」を含む、公害経験の継承と被害者支援では、(財)公害地域再生センターの「高齢認定患者リハビリテーションプログラムの開発に関する調査研究」に協力し、水島協同病院でおこなわれている教育入院プログラムの実施等にも関わっています。また倉敷公害訴訟の和解が成立した12月にあわせ、患者さんが咳など気にせず楽しめるコンサート&講演会をおこなっています。

(3)  公害・環境学習
 公害・環境学習では、「海のゆりかご」といわれるアマモ場や海底ゴミを活用した環境学習プログラムの検討。また、公害・環境問題と地域をまなぶエコスタディツアーの検討も行っています。その試験的な実施として、「おかやま環境塾」(岡山県委託事業)の開催も行っています。

(4)  情報収集・発信
 年6回の「みずしま財団たより」の発行、ホームページのリニューアル、そして地元コミュニティFMでの毎週1回の10分の番組などを通じて、みずしま財団の活動や公害・環境問題についての情報発信をおこなっています。  また、地域の環境やまちづくりをテーマに活動する団体とのネットワーク(GREENDAYや倉敷まちづくりネットワークなど)などを通じ、連携をとりながら、活動をすすめています。

3  組織基盤整備事業
 2006年度はみずしま財団として、長期の視点でめざす水島の姿を掲げ、その姿を実現していくための指針「事業の中長期計画」を策定した年でした。そして、次はそれら事業実施の裏付けとなる財務の中長期計画の策定が問われ、2007年度はその計画策定をおこなう年として年度当初は計画していました。しかしながら、その作業をすすめるうちに、実はそもそも財務のみならず、みずしま財団の課題についての共通認識が理事会・評議員会・事務局等で得られているのかという課題に直面しました。
 そこで、まず財務もふくめ、経営面の現状把握からおこなうことを始めました。みずしま財団の財政状況はどうなっているのか? 組織運営は? 事務局の体制は? 各理事・評議員が把握している課題はなにか?  情報収集やヒヤリングを通して、経営状況や課題の可視化をすすめていき、組織運営の改革・強化を図る段階にたどり着きました。来年度もひきつづき、組織基盤の整備、財務計画の策定をすすめていくことになります。  また、この組織基盤整備事業は、「育ちあい」という視点を含んでいる点が、大きな特徴としてあげられます。それは、この事業をみずしま財団単独でおこなうのではなく、地域で市民活動の中間支援に取り組み始めている団体とともにおこなうことで、実践的に学ぶことのできるフィールド提供の機会になっていることです。こうしたことを通じて、みずしま財団の組織基盤強化のみならず、地域の力を育てるという視点をもって事業を行っています。

4  おわりに −2008年度のみずしま財団−
 2008年度は、引き続き環境再生・まちづくりに関する事業、そして組織基盤整備事業を併せて行っていきますが、2008年度は日本環境会議の大会が水島で開催される年でもあり、とても重要な年です。
 現在、水島地域では、日本環境会議水島大会にあわせ、水島のまちづくりや公害・環境問題にとりくむ主体形成に取り組んでいます。具体的には、医療生協や市職労を中心とした「水島まちづくり研究ワーキンググループ」や、医師を中心としたワーキンググループ、また10数年ぶりにNO2調査をおこなう実行委員会がたちあがりました。
 みずしま財団では、こうした地域の主体形成に積極的に取り組むと共に、連携を図り、大会後も、環境再生・まちづくりを地域ですすめられるよう取り組みをおこなっていきたいと考えています。そのためには、まずは持続的にみずしま財団が活動していくことが求められます。そのためには公益法人改革をふくめた組織運営・基盤整備等の課題をクリアしていくことが必要となってきますが、地域とともに一歩ずつ着実にすすんでいきたいと思います。今後とも、皆様のご指導、ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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