公害弁連第37回総会議案書
2008.3.23  諫早
【2】 各地裁判のたたかいの報告(カネミ油症)
カネミ油症事件
カネミ油症事件弁護団
弁護士 吉野高幸

はじめに −新たな成果を獲得した年
 昨年のこの議案書のカネミ油症事件報告の「はじめに?裁判は終わったが・・・」には「昨2006年は、この運動に大きな飛躍をもたらした1年であり、今年(2007年)は新たな成果を勝ち取る年にしなければならない。」と記載されている。
 昨年はこの記載どおり(1987年の裁判終了以来)新たな成果を勝ち取る年にすることが出来た。

1  救済法(特例法)成立
 2007年6月1日、「カネミ油症事件関係仮払金返還債権の免除についての特例に関する法律」(以下特例法と略称する)が参議院本会議で可決成立した。
 仮払金(国に勝訴した第1陣、第3陣訴訟の判決に基づく仮執行金)返還問題は、訴訟終了後の原告団にとって頭の痛い解決困難な課題であった。
 しかし全被害者による「日弁連への人権救済申し立て(2002年4月以降数次)」、「カネミ油症全被害者集会と統一要求の採択(2006年4月16日)」、「日弁連の人権救済勧告(2006年4月17日)」、「与党プロジェクトチームの発足(2006年4月)」、「全被害者の東京集会と国会院内集会(2006年9月24、25日)」などの被害者の統一した要求と運動の高まりと「30数年苦しんでいる被害者に対し国が救済するどころか仮払い金の返還を求めるのはヒドい!」という世論の広がりによって与党のプロジェクトチームだけでなく、全政党を動かし、「国の債権管理に関する法律」の免除の規定を大幅に緩和する特例法が全会一致で成立したのである。

2  9割以上の被害者が免除に!
 特例法成立を受けて日弁連への人権救済申し立てを担当した弁護士とカネミ油症事件弁護団とは協力して特例法の内容を被害者に説明するとともに代理人として農水省に免除申請を行った。
 その結果、本年(2008年)1月17日までに465名の被害者が免除され、残る被害者は31名となった。
 つまり、本年1月までに93パーセント以上の被害者が免除されたのである。
 様々な事情で残された被害者についてもさらに免除を求める取り組みを続けて行かなければならない。
3  被害者の実態調査と研究協力金の支払い
 なお与党プロジェクトチームは、カネミ油症被害者の救済について仮払い金返還問題の特例法だけでなく認定患者約1,300人(現在、生存している患者、この他にも多数の死亡した患者がいる)を対象にした健康実態調査を実施し、健康実態調査を受けた患者に対し、研究調査協力金として、1人20万円を支給することを決め、2008年度予算案に盛り込んだ。
 この施策は、「どんなメンバーがどんな調査をするのか?」「いわゆる認定患者だけで良いのか?」「協力金の支給方法と対象はどうなるのか?もっと金額を増やせないのか?」などの問題が指摘されており、さらに充実させる取り組みが必要である。

4  新たな運動をはじめる年に!
 裁判終了後残されていた困難な課題であった仮払金返還問題は昨年解決に大きく動いた。
しかしカネミ油症被害者の救済にはまだ様々な課題が残っている。
 3で述べた被害者の実態調査を充実させ治療法の研究を進め被害者が安心して治療を受けることが出来るようにする等、まだ解決すべき課題が多い。
 さらに1987年の裁判終了後に認定された被害者は補償金の支払いを受けていない。
 国会では、特例法成立後の昨年6月21日超党派で「カネミ油症被害者救済の行方を見守る議員連盟」が発足した。  今年は新たな運動をはじめる年にしなければならない。
 今後もご支援ご協力をお願いいたします。
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