公害弁連第37回総会議案書
2008.3.23  諫早
【3】 特別報告
10年の取り組みが評価され、朝日新聞社「明日への環境賞」を受賞!

財団法人 公害地域再生センター
(あおぞら財団)

1  大きな賞を連続受賞!
 あおぞら財団が「第8回 明日への環境賞」を受賞しました(贈呈式07年4月)。朝日新聞社が環境保全の多様な取り組みを顕彰する目的で創設した賞で、受賞4団体の中に選ばれました。発足してから10年間の財団の取組みが社会的に認められた事に、大変うれしさを感じています。
 また、財団が参加する「河北地域エコドライブ推進研究会」(座長 新田保次・大阪大学大学院教授)ですすめているエコドライブ推進事業では、ともに事業を担った「トラック協会河北支部」が、全日本トラック協会の「鈴木賞」を受賞しました(授賞式07年9月)。06年12月には同研究会で「地球温暖化防止環境大臣表彰」も受けています。大気汚染の「排出源」でもあるトラック事業者とのパートナーシップは、地域の環境再生をめざす財団の新たな財産といえるのではないでしょうか。
 大きな賞の連続受賞には、よろこびと同時に財団に期待される役割・責任の重さを感じ、身が引き締まる思いです。

2  公害のないまちづくり
 「公害のないまちづくり」事業として、西淀川地域を中心とする阪神地域の道路環境対策について検証・提案する「西淀川道路環境対策検討会」で、「西淀川道路環境再生プラン・提言Part6(道路提言Part6)」を発行しました。タイトルは「西淀川発!これからの交通まちづくり〜低速交通のすすめ〜」です。クルマ社会は、公害問題をはじめたくさんの課題をかかえています。課題を解決していくためには、今まで社会が追い求めたクルマが便利な「高速交通」ではなく、公共交通や徒歩、自転車などの「低速交通」を「地域」で考え、まちづくりをすすめていく事が重要ではないかという視点でまとめています。法律、都市計画、交通政策、財政学、コンサルタント、教育など、道路検討会に参加する様々な専門家が、それぞれ提案をしています。
 また、新たな取り組みとして「自転車文化タウンづくりの会」の事務局をしています。だれでも乗れて、便利で環境にも良く、まちの空気・人とのふれあいも可能な自転車。不法駐輪や事故等の課題を解決し、もっと自転車の力をいかした社会にしようと、有志が集まり活動をはじめました。06年9月に財団理事の新田保次先生の呼びかけで準備会を立上げ、大阪市内の自転車ツアーや、他団体によびかけてシンポジウム形式の交流イベントなどを通じ、学習や、課題を整理してきました。08年5月の設立総会で、会は正式発足をする予定です。
 「エコドライブ」や「自転車文化タウンづくりの会」のように、「道路提言Part6」で示された「低速交通」「地域発」の実践を、できることからひとつひとつ取り組んでいきたいと考えています。

3  公害の経験を伝える…資料館の活動
 06年3月にオープンした西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)は開館2年目をむかえました。大学での授業や海外からの研修など団体の受け入れが相次ぎ、来館者数は述べ680人(08年2月現在)になりました。フィールドワークと公害被害者の語り部を組み合わせた見学・プログラムは大変好評です。
 見学の受け入れは増加していますが、エコミューズの課題は、西淀川公害についてわかる展示が不十分なことでした。しかし、展示を充実させたくとも、いかんせん寄付金が集まりません。そこで「西淀川公害の記録はみんなの宝です」のキャッチコピーで寄付金募集のチラシを作成しました。目標額の50万円が集まれば、展示が完成する予定です。ぜひみなさんご協力ください。

【郵便振替 払込先口座番号 00960−9−124893 (あおぞら財団)】

4  環境学習
 環境省ESD10年のモデル事業指定地域に、西淀川地域が採択されました。ESDとは、「持続可能な開発のための教育」(Education for Sustainable Development)の略称です。持続可能な社会づくりに参画する「人」と「人と人とのつながり」を地域全体で育む活動です。02年、日本が提案した「国連ESDの10年」(05年〜14年)が国連で採択されました。今まで西淀川で行われてきた活動をふまえ「自転車」「地域環境再生」「地域資源発掘」「食と交通」の4つのテーマをあげています。
 たとえば『自転車』では、06年の夏から大阪府立西淀川高校の生徒と一緒に調査を重ねてきた西淀川自転車マップ手元版が、完成しました。「たこやき屋」の情報など、高校生らしい遊び心もいれた自転車マップは産経新聞などに大きく紹介され、西淀川区内から多くの問い合わせや、応援の声も寄せられました。
 『食と交通』の関係がわかるフードマイレージ(輸送にかかる環境負荷)買物ゲームは、大きな反響を呼んでいます。新聞などの取材が相次ぎ、4セットあるゲームは予約で一杯、ほぼ毎日貸し出されている状況です。07年春から、1年間で約100箇所に貸し出しています。教員や指導者向けの出張講座、学校での授業の依頼も相次ぎました。
 2つの活動とも、他団体とのつながりがあってこそ生まれたものです。ESDの事業計画では、1年目は様々な主体が集まり実施計画をつくり、2年目にその計画を実行します。参加する団体は、大阪市環境局や西淀川区役所、大阪市教育委員会、高校や小学校、地域のまちづくり団体などです。様々な団体の代表が一堂に集まり、連携し、西淀川で持続可能な社会づくりのために何ができるか考えます。4つのテーマの他にも、新しい連携から何が生まれてくるのでしょうか。これを機に西淀川で活動する団体・個人がさらに大きく深いつながりをつくり、持続可能な社会をつくることができればと思います。

5  公害患者の生きがいづくり
 現在、60歳以上の公害病認定患者が約40%をしめています。加齢に伴い、公害病に起因する合併症などで、日常の生活が困難になっている患者さんが増えています。そこで、高齢化する公害患者さんの生活改善のための呼吸リハビリテーションプログラムを06年度より岡山県倉敷市の水島協同病院で検討し、07年度は「教育入院プログラム」を実施しました。このプログラムは10日間の教育入院を通し、患者さんに呼吸の仕方、薬の使い方、運動療法、食事療法などの生活法を身につけてもらい、その効果や有効性を確認するパイロット事業です。患者さんからは、「ぜんそくと仲良くしようということがやっとわかった。退院後が大切」など教わった事への理解の声とともに、「一人でやると、おもしろくない。仲間と一緒だから楽しい」など、グループ学習の楽しさを語る声が多く寄せられました。

6  最後に
 他にも紙面の都合上、紹介できない事業がたくさんありますが、これらの事業はもちろん事務局スタッフだけではまわしきれません。人手も知恵も足りません。ボランティアやアルバイト、インターンなど、財団を支えてくれる人の力があってこそです。いつもは事務局スタッフなど10名程度で行う忘年会に、アルバイトやボランティアの人たちにも声をかけたところ、30名もの人が集まり、楽しく杯を交わしました。下は高校生から上はシニアの方まで、職業も年齢も様々な人たちです。
 また、これからは国際交流に力を入れたいと考えています。「明日への環境賞」の副賞を基金とし、翻訳事業をしたいと考えています。特にアジアには公害に苦しむ地域がたくさんあり、資料館へもたくさんの方々が来館しています。
 地域のつながりを深め、世界につながりを広げ、公害のないまちづくりの実践をすすめていきますので、今後も引き続きご支援・ご指導よろしくお願いします。
(小平智子)
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