公害弁連第37回総会議案書
2008.3.23  諫早
【1】 基調報告
第2  公害裁判の前進と課題
7  国際交流の前進と課題
 2007年度も、これまで築いてきた国際連帯の絆を強め、深める年となった。
 「日本の公害・環境訴訟」をテーマにした韓国の司法修習生の来日研修の受け入れは、前年度に引き続き、2007年度も実現した。
 2007年7月2日に来日した15名の韓国司法修習生の研修は、「よみがえれ!有明海訴訟弁護団」の案内で、諫早湾干拓事業の現場を歩くことから始まった。一行は、7月4日に大阪、京都に移動して日本の公害裁判に関する総論的講義や、西淀川公害裁判、アスベスト被害等の個別課題についての講義を受け、さまざまな現場を歩き、公害被害者、弁護団と交流した。その後、7月7日に東京に移動し、環境省からのレクチャー、日本の司法修習生との交流等を行い、東京大気汚染公害裁判、新横田基地公害訴訟について学び、7月11日に帰国した。少しでも多くを学びとろうとする韓国の修習生の若々しいエネルギに日本側は大いに刺激され、韓国側からも、反公害闘争の経験を伝えようとする日本側の努力に対する率直な感謝が寄せられ、今後の日韓連帯の更なる強化に向けての貴重な種が蒔かれることとなった。研修の成功には、公害弁連の弁護士らの努力に加え、あおぞら財団等の協力が、極めて重要な要素であった。
 2007年8月24日から25日にかけ、東京経済大学、日弁連、日本環境会議の共催により、「環境被害救済と予防に関する日中韓国際ワークショップ」が東京で開催された。公害弁連は共催団体とはならなかったものの、その準備と運営に公害弁連の弁護士が深く関与し、これまで公害弁連が築いてきた日中、日韓の連帯の絆を生かしてワークショップを成功に導いた。
 また、2008年3月27日から30日の日程で、大阪・富山において、公害弁連、毎日新聞社、日本環境法律家連盟の共催で、「公害被害の救済と根絶に向けた日中弁護士交流会」を開催する準備が進められている。この交流会には、中国で公害環境訴訟に取り組んでいる中国政法大学公害被害者法律援助センターの弁護士ら3名を招聘する予定であり、日中の法律家で具体的事件について突っ込んだ意見交換を行う他、一般市民の方々にも参加を呼びかけてのシンポジウムの開催、イタイイタイ病事件の現場訪問も計画されている。
 さらに、2009年には、11月20日から23日の日程で、日本環境会議尼崎大会とともに第10回アジア・太平洋環境会議が開催される。こうした国際的な交流の機会に、日中韓の交流の蓄積を基礎にして、東南アジアなどの法律家との交流企画を検討したい。
 言うまでもなく、公害、環境問題は、全人類的課題である。特にアジアでは、急激な工業化、自動車交通の増加、公害輸出、各国の経済成長優先政策等により、深刻な被害が発生して来ている。これに対し、各国では、環境保護、公害被害救済を目指す市民、法律家が立ち上がり、エネルギッシュな活動を展開している。
 日本は、戦中、戦後の歴史を通し、アジアの政治、経済、社会の健全な発展を阻害し、環境破壊、公害被害の発生を助長してきた。公害弁連は、単なる地球村の一員としての責任にとどまらず、これらの歴史を踏まえた責任を、アジア諸国に対して負っている。
 環境保護、公害被害救済を目指して立ち上がった各国の市民、法律家との連帯をいかに広げ、深めるのか、2008年度も公害弁連の旺盛な取り組みが求められている。
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