公害弁連第37回総会議案書
2008.3.23  諫早
【3】 特別報告
全国公害被害者総行動 報告
全国公害被害者総行動実行委員会
事務局長 中山裕二

はじめに
 1976年に全国の公害被害者が「力を合わせて公害の根絶を」と全国的な連帯した運動に立ち上がって、すでに32年が経過します。この間、多くの諸先輩方の血のにじむようなたたかい、努力によって、多くの公害問題を解決し貴重な成果を生みだしてきました。公害被害者の連帯は、かつてなく強く深く広がっています。また、私たちのたたかいは、自らの救済を求めることはもとより、公害地域の再生、地球環境問題へも広がっています。
 わが国の公害被害者運動を切り開いてきた全国公害被害者総行動実行委員会(実行委員会)は、歴史的な到達点をふまえ、いま新たな役割と飛躍が求められています。

2007年のたたかい
1  東京大気汚染公害裁判
 昨年一番の運動の成果は、11年にわたる厳しいたたかいをへて、東京大気汚染公害裁判で勝利和解による解決を見たことです。原告団の命がけの奮闘に心から敬意を表するとともに、支えていただいた弁護団、支援のみなさまにお礼を申し上げます。
 東京大気のたたかいは、「公害はなくなった」とする政府に対して、真正面から挑んだものでした。今年8月から国、東京都、自動車メーカーなどが費用負担する医療費助成制度を確立し、公害防止策を約束させたことは、画期的な成果です。川崎市などでも貴重な前進を勝ち取っていますが、これを全国的に広げていくことが、この国に本当の青空ときれいな空気を取戻し、道路公害のないまちづくりをすすめていくことにつながっていきます。

2  水俣病のたたかい
 2004年10月の水俣病関西訴訟最高裁判決後、水俣地域では、救済を求める被害者が続々と名乗りをあげています。行政認定申請以外に救済を申し立てる手だてがなかったことや社会的な制約のもとでなかなか名乗れなかった人たちです。これまで、たたかってきた人たちの子供の世代、すなわち胎児性水俣病が発生したころ(1955年前後)に生まれた人たちが中心になっているのが特徴です。
 2005年10月、ノーモアミナマタ訴訟が提起されて、すでに1471名がこの裁判の原告となり被害に見合った正当な救済を求めています。
 これまでに公健法上の認定申請をした被害者が5,800人を超え、新しい保健手帳(医療費助成制度)を手にした被害者は、15,000人にのぼっています。
 このような実態であるにもかかわらず、環境省はまったくの無策であり、与党水俣病プロジェクトチームは「解決策」を示してはいるものの、最高裁判決を無視し、被害者の切実な要求ともかけ離れたもので、到底容認できるものではありません。
 3年目に入ったノーモアミナマタ訴訟は、夏以降、証人尋問などが行われる予定です。今年の取組が勝利のためには決定的であり、全国の公害被害者の力で後押しをしなければなりません。

3  第32回公害被害者総行動
 2007年6月4、5両日にわたった第32回総行動は、東京大気公害裁判の勝利和解に激励され、各地から上京した公害被害者が確信を持つことができました。
 総決起集会は、120団体、1,300名の参加で熱気あふれるものとなりました。特に、初めて参加した胎児性水俣病患者さんたちの懸命の訴えは参加者の胸を強くを打ちました。また、舞台で繰り広げられた「水俣ハイヤ2001」の踊りは会場と一体となりました。
 2日間にわたって実行委員会参加団体が手分けして取り組んだ各行動が成功しました。各団体が持ち寄った要求に基づく省庁、加害企業交渉が、同時進行で精力的かつ整然と行われました。
 この行動の中で、東京大気汚染公害裁判の最大の被告企業であるトヨタはじめ7社合意の対応は、5億円で「解決」したいなどとし不誠実極まりました。原告団は、怒りをもって総行動終了のその日からトヨタ本社前での昼夜を分かたぬ座り込みに突入し、全国の被害者団体の激励を受けながら、6月22日、東京高裁の解決策提示にいたるまで継続し、勝利を確実なものとしました。
 個々の交渉結果についてふれることはできませんが、交渉報告書がありますので、ご参照いただければ幸いです。32回公害総行動は、このような成果をふまえ、2008年第33回総行動に引き継がれることになりました。

4  第33回公害被害者総行動(6月2日〜3日)
 実行委員会は、昨年12月熱海合宿、1月には今年第1回の実行委員会を開催して、今年の取組を次のようにすすめようとしています。
 6月2日夜、日比谷公会堂で行われる総決起集会の中心課題は、
① 東京大気汚公害染裁判の勝利を引き継ぎ、公健法そのものの拡充、PM2.5の環境基準設定、これに対応する新たな被害者救済制度を確立していくこと。
② 水俣病被害者の早期、全面救済のため、当面、ノーモアミナマタ訴訟の勝利に全力をあげること。
③ 重要な局面を迎えている薬害イレッサの勝利、環境を破壊する無駄な公共事業と正面から向き合っている、有明海諫早干拓、川辺川ダム、首都圏道路などをやめさせること。
④ 7月の洞爺湖サミットを控えて、まったなしの地球温暖化対策強化を求めること。
の4点としました。
 地球温暖化対策の強化を求める運動は、2月7日実行委員会をはじめ、大気全国連、水俣病全国連、公害弁連、公害地球懇の5者で内閣府、環境省、経産省、外務省への申入れを行なっています。
 また総行動全体としても、大気汚染、水俣病はもとより、イタイイタイ病や薬害関係、新幹線や基地関係など、全国から持ち寄られた様々な要求に基づく交渉、行動がもたれます。
 今年も全国の公害被害者団体の力を合わせて、公害被害者総行動を成功させなければなりません。

5  初心にかえって
 3分の1世紀の歴史を重ねてきた公害被害者総行動の運動は、国内の公害被害者団体をゆるやかに網羅的にかつ各団体の自主性や独自性を最大限に尊重しながら協同するという形態ですすんできました。公害被害者同士が交流し激励しあいながら、力を合わせてそれぞれのたたかいに勝利していくという初心にたちかえることも重要だと思います。同時に、多様化する身近な環境破壊から地球規模の気候変動まで対応していくという懐の深さ、柔軟さ、実践していく力が求められています。
 戦後のわが国の公害を身を持って経験した被害者の経験と視点で、引き続き運動をすすめていかなければなりません。ここに私たちの大きな役割があると思います。
公害弁連の先生方としっかり団結して立ち向かっていく決意です。
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